様々な遺言書③

 ・内縁の妻との間に生まれた子を認知する遺言

法律的な意味での遺言とは財産の処分について書かれたものに限るのかというと、そうではありません。民法で規定されている法律上の効力を持った遺言の内容は、必ずしも財産処分のことに限られているわけではないのです。例えば、内縁の妻との間に生まれた子を、自分の子であると認める認知は、生前に行うと家庭内でトラブルが生じ、家族の非難を受けることにもなりかねませんので、遺言者の死後に遺言によって認知をすることが認められています。なお、同じように、遺言者に虐待や侮辱を重ねる推定相続人を相続の際、その地位から外す廃除も、生前に行ない難い状況が考えられるため、遺言によってすることが認められています。

正式の妻以外の女性との間にできた子については、父親はいつでもその子を認知することができます。前述したように遺言で認知することも可能です。ただし、その子が成年に達している場合には、その子の承諾が必要です(母親の承諾があれば胎児であっても認知することができます)。遺言により認知がされた場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知する旨の記載のある遺言書の謄本を添付して、市区町村役場に認知届を提出することが必要です。遺言書に遺言執行者の指定がない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を求めることになります。ただ、認知の効力は、届出の有無とは関係なく、遺言の効力発生時に生じ、出生のときに遡って父子関係が認められ、父の法定相続人となります。

・未成年の子のために後見人を指定する遺言

相続人に未成年者がいる場合には、最後に親権を持っている者は、遺言で後見人を指定することができます。未成年者の財産の管理や売却などは親権者が行いますが、親権者がいない場合には後見人がこれを行います。親権を行使する者は、遺言によって後見人を指定できることになっています。

また、未成年者の財産の管理などを後見人一人に任せることに不安がある場合には、後見人を監督する後見監督人を遺言で指定することもできます。遺言によって後見監督人が指定されていなかった場合には、その未成年者の親族等は、家庭裁判所に申し立てて後見監督人の選任を請求できます。なお、指定された未成年後見人や未成年後見監督人は、就職の日から10日以内に遺言書の謄本を添付して後見開始の届出を市区町村役場に提出する必要があります。