遺言があった場合の相続登記の原因について

 被相続人の方が遺言を残されており、遺言中で不動産の譲受人の指定があった場合、その譲受人が相続登記に際して、「相続」を原因として不動産の移転登記を受けるのか、「遺贈」を原因とするのかという問題があります。

これに関して原則としては、遺言書の文言に従えばよく、「遺贈する」又は「遺産を贈与する」等とあれば、登記原因は原則として「遺贈」となります。また、「相続させる」とあれば、相続財産の処分を受ける者が相続人である限り、相続分の指定又は遺産分割の方法の指定と解されるので登記原因は「相続」となります。

ただ、例外もあり、相続人全員に対して、相続財産の全部を包括遺贈する旨の遺言がある場合、例えば「遺言者Aは、その財産のうちの5分の3を妻に、残りを子供に均等に遺贈する」とある場合、遺言書の文言は「遺贈」ですが、「相続」を登記原因とするとされています。

また、被相続人の子が遺言書作成時及び相続開始時に生存している場合において、遺言書に「財産を孫に相続させる」という記載があるときは、その権利の移転の登記原因は「遺贈」と解するのが相当であるとされています。これは、孫は相続人ではなく、「相続」を原因とする登記を申請することができないことから、「遺贈」を原因とする登記を申請することとされたと解されます。

なお、「不動産は長女Aに管理させる」旨の遺言に基づいて、「相続」又は「遺贈」を原因とする所有権移転登記の申請はできないとされます。これは、被相続人名義の不動産を「管理させる」という遺言の文言からは、遺言者の意思解釈として、その不動産の所有権を譲り与えるものと解することはできないからです。そこで、このような場合には、原則どおり、共同相続人全員が法定相続することになります。