相続税と相続による不動産の名義変更(相続登記)の関係

みなさん、こんにちは司法書士の渡辺です。今回は相続税と相続による不動産の名義変更の関係について書いていきます。

相続税法には、相続人の生活に相続税の負担が過重とならないようにとの配慮があり、たとえば一定の条件下に相続人が取得した小規模宅地については相続税の課税価格を計算する際に最大で8割引きの特典があります。この特典を受けるためには具体的に遺産分割協議により特典を受ける宅地と取得する相続人を確定して相続税の申告書にその旨を記載しなければいけません。その協議が相続税の申告期限である10カ月以内に調わない場合には特典を受けずに相続税の申告納税をしておいて、その後、原則的には3年以内に条件が成就した時にあらためて得点を受ける途は残されていますが、いずれにしても期限があり、失念すれば特典を放棄することになります。

また、相続税については配偶者に対する相続税額の軽減も重要ですが、そこでは相続税の申告期限内に配偶者の取得が確定した財産を基礎とした税の軽減措置が定められており、小規模宅地の場合と同様に3年以内の救済措置はあるものの、特典を受けるための手続きに期限が定められています。そして、財産の取得確定とは、所有者名義を明示することです。預貯金であれば金融機関等で名義変更の手続きをすることであり、不動産であれば登記を申請することです。

相続税の申告の際に必要な不動産の取得確定には、必ずしも登記を申請しなくても遺産分割協議書の記載で足りるのではないかとの意見もありますが、税務当局は公式には登記事項証明書の写しを絶対的必要書類としてはいないものの、現実には提出を指導されており、納税者が有利性を確保するためには登記の経由は絶対に必要です。

また、例えば、3人の兄弟がそれぞれ3分の1ずつの共有相続をしたはずの宅地を実際に相続登記の際に誤って異なる共有持分による申請をしたことにより多額の贈与税課税に発展するケースがあります。具体的には、相続税の申告期限当時に、不動産の分割協議が調わなかったので、とりあれず均分による共有として遺産分割協議書を税務署に提出しておいて、その後10年以上も経過してからその土地について未分割遺産であると誤認して長男が大半を相続したものとして登記を申請してしまったというケースです。このようなことを避けるためにも早期の相続登記は必要といえます。