相続による不動産の名義変更(相続登記)のやり直しと税金について

みなさん、こんにちは。司法書士の渡辺です。今回のコラムは相続登記のやり直しと税金との関係について書いていきます。

通常、相続登記の際には相続人の方による遺産分割協議を行います。そして、いった遺産分割協議が成立しますと、協議参加者以外に相続権を有する者がいる場合、協議参加者の中に成立した協議につき意思の欠缺が認められる場合、その他成立した協議につき無効・取消しの原因が認められない限り、成立した協議の効果は確定します。ですので、一度した遺産分割と異なるような協議をしたとしても、それは理論上、遺産分割協議のやり直しではなく新たな法律行為となります。これは、税務のうえでも貫かれており、譲渡として認識されることになり、各当事者に譲渡所得税が課されます。相続登記のやり直しは可能ではありますが、それは従前の遺産分割協議により相続財産の取得が確定した後の資産の移転として、あらためて課税処分を受けることになります。

税務においては、いったん成立した遺産分割協議が有効と認められる限りは、協議をやり直したとしても、前の協議に基づいてなされた相続税の申告に対して修正申告に基づく追加納税、更正請求に基づく過誤納税額の還付請求は一切認められず、したがって、協議のやり直しに基づく遺産の異動が譲渡所得税の課税要件を満たすときは、やり直し協議の当事者に課税がなされること、その根拠は、税法独特の措置に基づくものではなく、いったん有効に成立した遺産分割協議のやり直しという観念は理論上成立せず、その実体は、前の協議で取得した財産の相互交換という新たな法律行為であるということになります。

なお、いったん遺産分割協議が成立した場合でも、協議参加者以外に参加すべき者がいたときは、前の協議は効力がないわけですから、遺産分割協議のやり直しは当然に認められますが、協議に参加すべき者が法定相続人である限り、その者を除外した遺産分割協議に基づく相続登記の申請、相続税の申告が適法なものとして受理されることは通常は考えられません。相続登記の申請書には、添付情報として、相続を証する市町村長その他公務員が職務上作成した情報およびその他登記原因を証する情報を添付する必要があり、具体的には相続を証する戸籍・除籍の謄本類、遺産分割協議書などがこれに該当し、相続税の申告書にも同様の書面を添付する取扱いがあるからです。