相続の際に集める戸籍について

 相続による不動産の名義変更をする場合には、通常、誰が相続人となるのかを証明しなくてはなりません。そのためには、被相続人(亡くなった人)の戸籍をさかのぼって集める必要があります。ただ、現在の戸籍謄本さえ取得すれば被相続人の死亡事実も出生年月日も載っているため、なぜ、被相続人の戸籍または除籍謄本をさかのぼって集めなくてはならないのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

さかのぼって集める理由としましては、戸籍が新たに編製される場合があるからです。戸籍が新たに編製される場合には、旧い戸籍に記載されていた事項が新しい戸籍に記載されない場合もあります。そうしますと、現在の戸籍謄本だけでは相続関係が十分に証明されたことにはなりませんので、さかのぼって戸籍を集める必要が出てくるのです。

・戸籍が新たに編製される原因の一例

1.婚姻したとき

 日本人同士が結婚すれば、夫婦のために新たな戸籍が編製されます(戸籍法16条1項)。ただし、夫婦が夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した人(筆頭者)であるときは、新たに戸籍は編製しません。この場合、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入ります。また、妻の氏を称する夫は妻の戸籍に入ることになります。

2.管外転籍したとき

 本籍を他の市町村に転籍したときは、新たな戸籍が編製されます(戸籍法34条、37条)。この場合、戸籍の筆頭者以外で死亡、婚姻等によって除籍された人については新戸籍には記載されません。

3.戸籍を改製したとき

 法律によって戸籍は何回か改製されています(戸籍法附則3条)。最近では、戸籍事務のコンピュータ化によって改製されています。改製する際には、改製前の戸籍の時点で死亡、婚姻等によって除籍されている人は、新戸籍には写し替えをしません。

4.復氏する場合

 婚姻または養子縁組によって氏を改めた人が、離婚、離縁または婚姻もしくは縁組の取消しによって、婚姻または縁組前の氏に復するときは、婚姻または縁組前の戸籍に入りますが、その戸籍がすでに除かれているとき、またはその人が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製します(戸籍法19条1項)。