相続する不動産を共有する場合

一般的には、不動産等の遺産を共有することはあまり勧められません。というのも、共有者間に感情的なもつれが生ずると、共有物分割請求訴訟に発展するおそれがあり、紛争の先送りにすぎないことがあり得るからです。また、共有者間に相続が発生すると、共有関係が複雑化し、共有物の管理に困難を来すことも考えられます。

ただ、相続人の一人の単独所有とするような現物分割や代償分割ができず、しかも換価を避ける方が望ましい場合もあり、相続人間に感情的な対立がなく、共有物の使用、管理等に支障がないようなときには、遺産を相続人の共有とすることが適切なケースもあります。遺産を共有とする場合、その持分割合を決める必要があります。持分割合をどのように定めるかについての一般的な基準はありません。遺産が不動産だけであれば、法定相続分により共有持分割合を定めることは合理的だと考えられます。ただ、不動産以外にも遺産がある場合には、共有とする財産以外の遺産にどのようなものがあるか、それらを誰が取得するのかなどの事情を考慮した上で、各相続人の取得する財産の価値が法定相続分に近づくように配慮して共有財産の持分割合を定めるのが合理的と思われます。

また、遺産を共有とする遺産分割協議が成立した場合でも、相続人による共有物分割請求は制限されるものではありません。遺産分割協議後に相続人の一人が、直ちに共有物分割請求をしたような場合には、アパートを共有とする遺産分割協議が意味のないものとなってしまいます。この点において、共有による遺産分割は紛争の先送りとの批判もされています(東京高決平2.6.29)。そこで、一定期間共有関係を継続させたい場合には、遺産分割協議書又は別途合意書等により、不分割の合意をすべきです。共有物の不分割の合意は、5年以下の期間であれば当然に許されます。

参考判例

・遺産を単独取得するための代償金の調達が困難である場合に、当該遺産を売却処分する合意が成立していることを前提として法定相続分の割合で共有取得させるのが相当であるとした事例(大阪家審昭59.4.11)。

・遺産分割審判において遺産分割中の不動産につき、換価分割の方法や代償分割の方法は採り得ず、また共有とする分割も相当ではないとしつつ、申立人3名と相手方3名はそれぞれグループとしてまとまっておりそれぞれ互いに協力協調関係が取れているものと認められるので、同一グループ内で遺産を共有取得させても、新たな紛争を惹起する可能性もほとんどないと推察されるとして、遺産の一部を申立人らの共有とし、残部を相手方らの共有とした事例(札幌家審平10.1.8)。