介護に努めた相続人の寄与分について

 相続人が病気療養中の被相続人の介護に従事した場合、寄与分が認められるためには、通常の寄与を超える特別の貢献でなければならず、夫婦間の協力扶助義務あるいは親族間の扶養義務を超える程度のものである必要があり、そのため、被相続人の療養看護を要する程度と療養看護の期間が問題となります。

第三者に療養看護をさせて相続人がその費用を負担した場合は、財産出資型(被相続人やその事業に対して、財産上の給付あるいは財産的な利益を提供して財産を維持・増加させ、あるいは、債務の返済等により被相続人の財産の維持に寄与する場合)の一態様ということができ、相続人が負担した費用の金額がそのまま寄与分額と認めることができることが多くあります。

他方、実際の療養看護の場合については、その算定が困難ですが、付添婦や看護補助者等の日当額と療養看護日数との積を基準とし、被相続人との身分関係、被相続人の病状、療養看護の専従性の程度、相続人の失った事業利益又は給与若しくは報酬などを考慮し、裁量による前記基準額に相当割を乗じて算定する方法などがあります。

具体的な事例

・10年の療養看護について、看護婦・家政婦紹介所扱いの当時の協定料金の基本料金日額4,500円、夜間の付添看護も必要となってからは同協定の泊まり込みの時間外手当が加算された日額6,750円で算出した合計額(1,971万円)に、付添者が職業付添婦ではないこと、6年間は被相続人の療養看護の傍、家族のための一般家事労働をなす余裕があったことを考慮して、前記合計額の60パーセント相当額(1,182万6,000円)を寄与分として認めた(盛岡家審昭61.4.11家月38.12.71)。

・高血圧と心臓病の悪化により寝たきりとなった被相続人を、相続人である長男の妻が付っきりでおおむね28か月間看護したケースにつき、被相続人の死亡直前の6か月を月額9万円程度、その余の22か月を月額3万円程度が通常の扶助を超える部分と評価し、寄与分の価格を相続開始時において120万円と評価した(相続開始時の遺産総額は851万8,000円、神戸家豊岡支審平4.12.28家月46.7.57)。