農地の相続について

 農地とは、耕作の目的に供される土地のことをいい、農地の所有権を移転する際には、原則として農業委員会の許可が必要となります。しかし、例外的に農業法3条1項各号に該当する場合には、前記許可が不要とされており、相続遺産分割による移転の場合も前記許可が不要な場合として列挙されています。

なお、遺産分割の調停において、相続放棄した相続人が利害関係人として参加し、相続人から農地の贈与を受けた場合、農地法3条の許可を要するかにつき、最高裁昭和37年5月29日判決は、遺産分割の家事調停において、相続人から利害関係人である相続放棄者に対し農地を贈与する旨の調停条項が成立しても、農地法3条1項但書7号所定の遺産分割による場合に当たらない旨判示し、知事の許可を要するとしています。

・農地の評価方法

農地を相続する場合、相続税申告の際の農地の評価方法については、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地の分類に従って評価基準が定められています。遺産分割を行う際にも、当該農地の位置・性質等により農地の評価が異なってくるものと思われますが、公簿上は農地であるとしても、周辺が宅地化されているような場合には、宅地見込地として評価される場合がありますので注意が必要です。

・参考判例

「遺産分割において、公簿上農地の土地の付近が既に宅地化されていることなどを理由として宅地見込地として評価し、被相続人の農業を承継し専業農家として生計を立てている相続人に対しできる限り農地取得をさせるようにすべきかにつき、農地をほかの相続人(抗告人)に取得させても生活を維持し得なくなるとはいえないこと、抗告人の相続する遺産の価格がその相続分を遙かに超えること、抗告人に農地の価格に相当する金銭の支払能力がないことなどから消極に解した事例」