相続の際、被相続人が残した現金があった場合にはどうすればよいでしょうか。

被相続人の財産に現金があった場合、まず現金が遺産分割の対象となるかが問題となります。この点、現金について、最高裁は「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないと解するのが相当である」(最判平4.4.10)として、相続人が保管する現金は遺産分割の対象になると判示しました。近時、東京地裁平成19年6月29日判決も現金及び記念硬貨について、「相続開始時に存した金銭であり、遺産分割までの間は自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない」と判示しています。したがって、現金については遺産分割の対象として考えることになります。

なお、貸金債権等については、遺産分割まで権利が確定しないと、対債務者との関係で法律関係が複雑になるのに対し、現金自体はそのような第三者が存在しない以上、相続人間で協議して決める方が適しているといえます。

・参考判例

相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない(最判平4.4.10)。