相続税の物納について教えて下さい。

相続税の納税義務者は、納付すべき相続税額を延納によっても金銭で納付することが困難な場合には、その納付を困難とする金額を限度として物納の許可を申請することができます。この金銭で納付することが困難かどうかは、現金・預貯金を相続したかどうか、固有の財産の有無などの事由で判断されます。相続または遺贈により取得した財産は国内にあるものに限られ、また、物納に適する財産が2以上ある場合には物納に充てる順序が次のとおり定められています。

第1順位 国債・地方債及び不動産・船舶

第2順位 社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券

第3順位 動産

そして、物納の許可を申請しようとする者は、その物納を求めようとする相続税の納付期限、または納付すべき日までに金銭で納付することを困難とする金額、およびその困難とする事由、物納を求めようとする税額、物納に充てようとする財産の種類及び価額その他必要な事項を記載した物納申請書を納税地の所轄税務署長に提供しなければなりません。

・物納できない財産、物納劣後財産

平成18年税制改正により、物納できない財産、物納劣後財産(物納が後順位になる財産)が明確にされました。このため、不動産等の物納を選択する前に、その財産が管理処分が適格に行えるかどうかの視点に立って、担保物権が付着していないこと、所有権の帰属をめぐる係争がないこと、共有物でないこと、境界が明らかな土地であること、無道路地でないこと、耐用年数が経過していない建物であることを事前に調査する必要があります。さらに、違法建築物とその敷地、地上権などの用益物権が付着している土地は物納劣後財産として扱われることにも留意が必要です。

物納は申請してから許可になるまで相当の審査期間がかかることが難点ですが、許可になるまでに申請を取り下げることが可能なため、売却予定相続不動産が予定どおり処分できない事情があっても、まずは物納申請をしておいて、有利に売却できた時点で申請を取下げて金銭納付に変更することもできます。もっとも相続税の期限内申告をした者には、相続税を納付する義務があるものの、金銭納付に代えて物納申請をして、許可された後にこれを撤回して延納に変更する方法が認められています。