まず、自分で遺言書を作成する自筆証書遺言(遺言者本人が、遺言の全文を自書し、押印した遺言です)は、費用もかからず手軽ですが、自分の死後に相続人の間で、当遺言の内容の解釈が争われる可能性があります。自分で遺言書を自書して作成する自筆証書遺言で、もっとも争われるポイントは、遺言の内容について特定できていないことです。
例えば、
・遺言者の所有する預金について、長男、次男で分けてください。
といった内容で遺言がされたとします。この場合、預金を長男と次男が取得することは分かりますが、いくらずつ分けるのかが書いてありません。実務上、この内容の遺言書をもって、金融機関に預金解約を申し出ても、遺言の内容が特定できていないため、解約できない可能性が高いでしょう。ですから、この場合には、預金をいくらずつ分けるのかをきちんと書いておく必要があります。
また、
・遺言者の所有する土地を、北半分と南半分に分けそれぞれ長男、次男にあげます。
といった内容の遺言がされた場合、土地の分筆登記を行ってから、相続登記を行うことになります。ただ、遺言書に正確な地積測量図等が付されていないと、北半分と南半分が特定できないこともあり、登記手続きができない可能性があります。現在の判例では、遺言で一筆の土地の南北に何平方メートルと特定できれば、遺言執行者が具体的に境界を確定し、それを測量して図面を作成し分筆登記ができると考えられます。結論としては、この遺言の特定の仕方では、登記できないと考えられます。
公正証書遺言の勧め
上記のように、自分で遺言書を作成するのは、費用もかからず手軽ですが、自分の死後に、相続人間で、遺言の内容の解釈が争われる可能性があります。そうしますと、遺言を作成した意味がなくなってしまいます。そこで、遺言書を作成する場合には、公正証書遺言をお勧め致します。遺言の内容の解釈が争われるのは、ほとんどの場合、自筆証書遺言のケースです。公正証書遺言では、若干公証人の費用がかかりますが、遺言の内容の特定について後日争われることは少なくなります。
当事務所では、公正証書遺言の作成のお手伝いをさせていただいておりますので、お気軽にご相談下さい。