相続の対策③(相続時精算課税制度)

こんにちは、司法書士の渡辺憲久です。今回は相続対策として、相続時精算課税制度について書いていきます。

 相続時精算課税制度とは、子(20歳以上)が親(65歳以上)から生前贈与を受けた時に2,500万円までは贈与税を支払うことなく、これを超える部分について、一律20%の贈与税を納めることになるという制度です。そして相続発生時に、その贈与価格を相続財産に加算して相続税を計算します。

この制度は、消費を拡大するため、親から消費をする子の世代への贈与をスムーズにするようにという目的でつくられています。生前に贈与をした場合には贈与税が軽減されますが、その代わりに相続の時には、贈与された財産と相続された財産を足した額に相続税がかかる、という制度です。

相続時精算課税制度の特徴

1.特別控除額

相続時精算課税制度を選択した場合の贈与税は、贈与をした親ごとに、贈与を受けた額から2,500万円までが控除されます。2,500万円の特別控除については、財産をもらう人が一生でもらえる財産の総額であり、贈与の回数は何回あっても構いません。また、一人の子が父母それぞれから贈与を受けた場合、父からの贈与につき2,500万円まで、母からの贈与につき2,500万円まで、最高で5,000万円までが控除されます。2,500万円を超える部分については一律20%が課税されます。なお、2,500万円を超える部分に対しては一律20%の贈与税がかかるのですが、そのときに支払った贈与税は、相続の時の相続税から控除することができます。ですから、税金を二重に支払うようなことはありません。

2.暦年課税制度には戻れない

いったん相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については、従来からある110万円(基礎控除額)まで税金がかからないという暦年課税制度には戻れません。したがって、翌年以後に発生した父又は母からの基礎控除額(110万円)以下の贈与についても、贈与税の申告が必要になります。

3.相続財産の価値変動リスク

値動きが激しいものについて贈与を受けた場合は、注意が必要です。相続税の計算において、相続時精算課税制度の適用に係る贈与財産も相続財産に加算することになりますが、その場合に加算する贈与財産の価額は相続時の価額ではなく、贈与時の時価とされています。

つまり、贈与を受けた財産について、相続開始時までに大幅に価値が下落したとしても、相続税の計算上は贈与時の高い時価にて税金を計算することになります。逆に、贈与を受けた財産の価値が上昇する場合には、贈与時の低い時価に据え置きできるというメリットもあります。

4.相続以前の財産活用

贈与を受ける子の側からみれば、相続が開始する前から財産を自己の財産として活用できることになります。

5.相続税のための資金

2,500万円までの財産に対する税金は、納付時期が贈与時ではなく、将来の相続時となりますので、この部分については納税するための現金を用意する時間的な余裕ができます。

相続時精算課税制度には上記のような特徴があります。ただ、税金は複雑ですから、節税対策に利用する際は税理士に相談することをおすすめ致します。当事務所にご相談いただければ、税理士と連携して業務にあたらせていただきますので、よろしくお願いいたします。