相続財産法人

 民法では、相続の際、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産それ自体が法人になるとしています(民法951条)。この相続財産法人の成立時期は、被相続人の死亡の時と解されています。相続人のあることが明らかでなく相続財産法人が成立した場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって相続財産の管理人を選任し、遅滞なく管理人の選任の公告をしなければならないとされています(民法952条)。なお、利害関係人は、相続財産の管理及び清算につき法律上の利害関係を有する者をいいますが、審判実務上は、受遺者や相続債権者、相続財産の担保権者のほか、特別縁故者等も広く利害関係人として取り扱われます。

そして、相続財産管理人は、相続人の捜索と相続財産の管理及び清算の手続を行うことになります。相続財産管理人は、就職後速やかに相続財産の現状を調査してその内容を把握し、かつ、現状を保全するために適当な措置を講じなければなりません。また、相続財産管理人は、財産の保存及び管理をする権限を有するのみで、それを超える行為については家庭裁判所の許可を要します。相続財産管理人の権限内の行為としては、被相続人の生前売買につき登記義務者として所有権移転登記を申請すること等があり、許可を要する権限外の行為としては、相続財産の売却処分等があります。

なお、相続債権者への弁済のために相続財産を換価する必要が生じたときは、これを競売に付さなければなりません。そのため、相続財産管理人が家庭裁判所の権限外行為の許可を得て任意に不動産を売却し、弁済資金及び管理費用を調達する例が実務上少なくないとされています。また、相続財産管理人が相続財産法人の代表者として任意売却による所有権移転登記を申請する場合には、その申請書に家庭裁判所の権限外行為の許可書の添付をしなければなりません。