相続の際取得した土地について、遺産分割と同時に境界を定める場合

境界は、所有権を画する概念として用いられることもありますが、法律上は、ある土地と隣接する他の土地とを区切る公法上の線(地番の境)のことをいいます。この境界は、公法上の事実であるため、当事者で任意に定めることはできません(最判昭31.12.28)。そこで、この境界を特定するために以下の2つの制度ないしは手続きがあります。

・境界確定訴訟

隣接する土地の所有者同士で境界に争いが生じたようなときは、土地の所有名義人等は、裁判で境界の確定を求めることができます。境界確定訴訟は、境界が公法上の事実であることから、裁判所は当事者の主張に拘束されないなど通常訴訟とは異なる特色があります。従来、境界を確定する方法としてはこの境界確定訴訟を提起せざるを得ませんでした。しかし、平成18年施行の不動産登記法により境界を特定する方法として筆界特定制度が設けられました。

・筆界特定制度

隣接する土地の所有者同士で境界に争いが生じたようなときは、土地の所有権登記名義人は法務局に対して筆界特定の申請をすることができます。筆界特定制度は、土地の所有権の登記名義人等の申請に基づいて、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、土地の筆界の現地における位置を特定する制度です。

境界を確定する制度としては上記のように、境界確定訴訟及び筆界特定制度の2つがありますが、遺産分割の際どちらの制度が利用しやすいかは事案によります。なお、筆界特定制度は一般的に訴訟よりも期間が短く、かつ法務局内にある資料をくまなく利用できる点がメリットとされます。

なお、境界確定訴訟と筆界特定制度は競合するため、不動産登記法は両者の関係について次のような規定を置いています。

1.筆界特定がされた場合において、境界確定訴訟の判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。

2.境界確定訴訟の判決が確定しているときは、筆界特定の申請は却下される。

3.筆界特定がされた場合において、境界確定訴訟が提起されたきは、裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができる。境界確定訴訟が提起された後に筆界特定がされたときも同様。

参考判例

相隣者との間で境界を定めた事実があったとしても、特定の一筆の土地の固有の境界は変動しないとした事例(最判昭31.12.28)。