相続財産に属するものとして、土地建物、現金、預金、債権・債務等がありますが、相続財産に含まれるかどうかが問題となる財産もあります。
・借家権
借家権は一般の財産と同様に相続されます。ただ、家主からの明渡請求に対し、共に生活していた相続人でない者(内縁の配偶者等)がどうなるのかが問題となります。判例としては、「内縁の夫である建物賃借人が死亡した場合、賃借人の内縁の妻は、同人の相続人ではないが、相続人の賃借権を援用して、家屋に居住する権利を主張することができる。この場合、その内縁の妻は賃借人となるわけではないから、賃貸人に対して賃料支払義務を負わない」としています(最判昭和42・2・21民集21・1・155)。また相続人からの明渡請求については、権利の濫用として許されない場合があるとされています。
なお、公営住宅法の適用を受ける公営住宅の使用権については、「公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、公営住宅を使用する権利を当然に取得すると解する余地はない」として、入居者を限定している同法の趣旨に照らし、相続の対象とはならないとしています(最判平成2・10・18民集44・7・1021)。
・保証債務
保証債務は主債務者・保証人間の人的信頼関係を基礎としますので、一身専属的性質を有するとして、その相続性が否定される余地もあります。ただ、判例としては、金銭消費貸借上の保証債務や賃貸借上の保証債務など通常の保証債務については、相続により当然承継されるとしています(大判昭和9・1・30民集13・103)。
一方、身元保証や包括的信用保証など特に個人的な信頼関係に基づくものについては「身元保証契約に基づき身元保証人の義務は、専属的な性質を有するから、特別な事由のない限り、相続人はこれを承継しない」とし、相続性を否定しています(大判昭和2・7・4民集6・436)。