相続財産の範囲②

 ・生命侵害による損害賠償請求権

原則として、不法行為や債務不履行による損害賠償請求権も、いったん発生すれば、通常の債権として相続されます。ただ、生命侵害による損害賠償請求権には若干問題があり、以下のような判例があります。

逸失利益(財産的損害)

被相続人の生命が交通事故等により侵害された場合、被相続人は、自己の生命侵害による財産的損害(生存していれば得られたであろう逸失利益)に係る損害賠償請求権を取得します。そして、相続人はその損害賠償請求権を相続するとされています。この点、判例は「被害者が即死した場合でも、致命傷と死亡との間には現実的・観念的に時間的間隔を認めることができるから、被害者には受傷の瞬間に損害賠償請求権が発生し、これが被害者の死亡によって相続人に権利が承継される」とし、即死の場合には損害賠償請求権の相続性を肯定しています(大判大正15・2・16民集5・150)。

慰謝料請求権(精神的損害)

生命侵害によって生じた財産的損害以外の損害賠償請求権、すなわち慰謝料請求権の相続性については、慰謝料請求権は被相続人固有の権利であり、相続人は相続しえないのではないかが問題となります。この点、判例は「不法行為による慰謝料請求権は、財産上の損害賠償請求権と同じく金銭債権であり、また、民法711条により同条所定の者が固有の慰謝料請求権を取得し得るとしても、それは被害者の取得する慰謝料請求権と併存し得るものであるから、被害者の慰謝料請求権が相続の対象とならないものではなく、当該被害者が死亡した場合は、相続人が当然に慰謝料請求権を相続する」とし、慰謝料請求権の相続性を肯定しています(最大判昭和42・11・1民集21・9・2249)。